■本日のカイシャ本 4:「WASHハウスの挑戦」
こんにちは。
今回紹介するのは「鶴蒔本」。世のカイシャ本ファンたちのレジェンドにして、「ありがとう浜村淳です」と並ぶ、ずっとやってるけど1回も聴いたことないラジオ「こんにちわ!鶴蒔靖夫です」のパーソナリティでおなじみ!(8500回以上放送!)
シニアにもうれしい大っき目の字の本でおなじみ!
読み始めても長い前置きすぎてなかなか会社が出てこなくて不安に…でおなじみ!
「社内に貼られていた地図が日本地図から世界地図になっている。これは世界を見据えているんだろう」とか、細かいとこまでよく気がつきすぎ!でおなじみ!
鶴蒔靖夫先生の本です。
WASHハウスの挑戦: コインランドリーのデファクトスタンダードへの道
- 作者: 鶴蒔靖夫
- 出版社/メーカー: IN通信社
- 発売日: 2017/06/26
- メディア: Kindle版
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こう書くと若干ディスってる風にみえますが、僕は、鶴蒔先生の偉業に世はもっと注目した方がいいと本気で思ってます。なので、カイシャ本ファンでない方々(世の大半)のために先生のことを少し紹介しておきます。
鶴蒔靖夫氏は1938年樺太生まれ。もうこの時点で「激動」って言う字が浮かんできて我々とは一味違う感じがします。
その後、人物評論社で雑誌編集を担当した後、ライター・評論家として独立。以来、ラジオパーソナリティなどをやる傍ら、かれこれ50年ちかく、自らの目線で選んだ起業家や企業などを丹念に取材し、彼らの魅力をカイシャ本に。著した企業本の数は400冊以上にものぼっています。
しかも選ぶ会社、選ぶ会社、メジャーどころを突かずかなり独特。「プラント塗装業界のパイオニア カシワバラコーポレーション」とか、ひどく渋めなのも多いです。それでも「パン、麺」など食品に使われる「でんぷん製品」のトップシェア企業・松谷化学工業とか、「激落ちくん」などを生み出す「100均グッズの雄・レック」とか、自分たちが知らないだけで毎日、お世話になっている企業を取り上げてくれることも多く、読むととても勉強になります。
ちなみに、昨今話題の加計学園も、2011年の時点でいち早く目をつけ本にしています。
「日本のいい会社」シリーズの坂本光司教授が書く「坂本本」などは、結構ビジネス誌などでもフィーチャーされている感じがしますが「鶴蒔本」は全然です。もうこれは由々しき事態です(笑)。
さておき、そんな「鶴蒔本」が、本書でとりあげているのは「WASHハウス」。コインランドリー業界に独自のビジネスモデルを持ち込んで今、急成長している企業です。
本の帯文も「これがコインランドリーの世界標準だ!!」と「日本よ、これが映画だ!」ばりに気合が入っています。
たしかに、最近、コインランドリーがどこも「小ぎれい」になってきたのは肌で感じます。ちょっと前までは、薄暗くて、ヤンジャンとかが散らかってる感じだったのに。その「小ぎれい化」の流れを作ったのが、この「WASHハウス」だと言えるでしょう。
本書は、その独自のビジネススタイルの秘密に迫っているのですが、あいかわらず冒頭1章は、なかなか本題の「WASHハウス」の話が出てきません(笑)。
その代わり、
- 世界初のコインランドリーは米テキサス州で1934年4月18日に生まれたこと
- 今は、1970年代の男のひとり暮らし用ランドリーブーム、1980年代の働く女性用 ランドリーブーム、2000年代の花粉症対策用ランドリーブームに続くコインランドリーの第4次ブームの最中なのだということ。
- ランドリーの排水ダクトには、ステンレス鋼材が使われるべきなのに、コストをごまかして亜鉛など軟材を使う業者も多いこと。
…など「コインランドリー業界のへぇ~話」がたくさん身につく流れになっています。
ちなみに近年は、マンション、コインパーキングなどに続く、ちょっとした投資先として「コインランドリー」が注目を集めていますが、ランドリー投資に興味がある人も本書を読むといいかもしれません。業界や投資の現状のことも書いてありますので。
そして2章以降で、ようやく「WASHハウス」の独自モデルの紹介に入ります。
本書によれば、同社のビジネスモデルの特徴は大きく2つ。
➀出店費用と運営手数料以外は、WASH側が行う独自のFCシステム
②IOTを駆使した、店舗運営一括集中システム …にあるよう。
➀独自のFCシステム
これまでのコインランドリー業界では、主に乾燥機など機材の販売会社がお金や土地を持っているオーナーに「コインランドリーやりませんか?」と持ち掛け、出店資金などを出してもらう、というパターンが多かったそうです。
ですが、その場合だと機材販売会社はお店の運営ノウハウなど持っておらず、機械さえ売れればあとはお任せ。また、オーナーは「お金だけ出す」といっても実際には、料金の回収や店舗の清掃などを自分でやらねばならないため手間。
だから気がつけば、清掃が手薄になり店はヤンジャンやマガジンだらけに…ということも多かった。
ですが、WASHはそこを大きく変えた。オーナーは店舗の出店費用や運営手数料だけ投資すれば、あとは同社が出店場所の選定から、清掃、料金回収、設備のメンテナンス…まで店舗運営の全てを請け負う形にしました。
そうすることで、オーナーは「お金だけ出せばいい」ので、土地の確保や人員の確保に縛られる必要もなく、多店舗の投資ができるように。また、WASH側もお金を募りやすい分、出店ペースを速めることができるようになったのです。
ちなみに、コンビニなどのFCの場合は、店員をオーナー側が用意しなくてはなりませんが、コインランドリーは店員いらずでも運営できます。だから、WASHのFCでは、オーナーは経営に全く口を出さなくてよくなるし、逆に、WASH側も口を出されないことで均一のサービスを全国に広げることができます。これも急速な成長を支える要因になっています。
そして、店舗運営の全てを任されたWASHは、店にソファなどを置かないことで長居する客を減らし、女性客の不安を解消する(長居している男の客にジロジロみられるのは嫌)など、キメ細やかな店づくりを行いました。これが近年のコインランドリーの「小ぎれい化」の流れにつながったのです。
ちなみに個人的には乾燥機の乾燥温度もしっかりと表示することで「わざと低い温度にして長時間回させてお金を取るなどしてませんよ」と示しているところなども配慮が行き届いてるな、と感心させられました。
②IOTを駆使した、店舗運営一括集中システム
コインランドリーは無人ですが「店員が応対するのと同じ状況を作りたい」と考えたWASHの児玉康孝社長は、店内の4隅に監視カメラを取り付けつつ、その映像を本社の監視センターで一括管理。来客が機械の使い方などで困れば、遠隔操作でオペレーターが対応できる仕組みを作りました。
これにより、お金を盗もうとする不届者がいても「やめなさーい!」と警告を発することもできるようになり、盗難被害も減ったそうです。
また、売り上げや、何時に何回機械が使われるか?などのデーターも本部で一括管理。出店場所の割り出しに使われたりするそう。こうしてビッグデータを収集していることもあり、過去15年で退店したランドリーは1店舗もないといいます。これはなかなかすごいことです。銭湯の脇にある薄暗いブースのイメージからは大分進化しています。
こうした経営の2本柱を中心に同社は、コインランドリー利用率3%という「コインランドリーの僻地」宮崎県から事業を起こし、今や、全国410商31億円の成長企業になっています。今後は、このシステムをアメリカやタイにも輸出し、グローバル展開を図ろうともしているようです。「これがコインランドリーの世界基準だ!!!」もダテじゃないです!
というか、本の中に出てくるタイのコインランドリーの画像が「外に洗濯機並べてるだけじゃん!」という感じでなかなかショッキングです、、WASHさん!早く、タイに行ってあげてよ!
なお、同書には、児玉社長の半生も書かれているのですが、「えこひいきと取られたくないから幹部以外の社員とは一切話さない」など、えええっっーーとなることも結構書いてあり、「やっぱ社長になる人って尋常じゃねえな」と思わされます。社長の人生に興味のある方はぜひとも読んでみてください。
「鶴蒔本」の魅力はまだまだ400分の1を伝えた程度。今後も、折に触れ紹介していきたいと思います。